アサヒカメラ・エキサイトブログ コラボ企画 パパ・ママブロガー&プロカメラマンに聞いた!「うちの子」写真の撮り方Part2

プロカメラマン 三澤武彦さんに聞きました。 子どもの写真撮影で優先することは?

その場の雰囲気を大事にする!

家族の写真には定評のある、エキサイトブロガーの人気写真家・三澤さん。みんなが自然に笑顔になる瞬間をとらえた、心あたたまる結婚式や七五三など家族の記念日写真が話題に!プロの目線から、子ども写真を撮るうえで大切なことを教えていただきました!

三澤武彦さん
プロフィール
ブログ 「三澤家は今…」Misawa Now blog版

子どもの自然な表情やその場の空気感が伝わるような写真を撮られていますが、自分らしい一枚は?この瞬間を選んだのは?

これはうちの次男坊と三男坊が野球の練習から帰ってきたときに撮ったもの。夏は練習から帰るとそのまま庭で水遊びをすることが多くて、一緒に水遊びし、笑いながらその様子を撮っていました。

ぼくの写真は被写体の魅力に頼っていることがとても多いんです。大人でも子どもでも何かをやらせるとどうしてもぎこちなくなってしまうし、うまくいっても何か作られた感というか、撮っている自分の中でも予定調和しすぎてワクワク感がなくなってしまうんです。だから指示はしないでヒントだけ与えるんです。

「おしっこみたいじゃん」って。男の子は下ネタ好きだからあとは自分たちで遊ぶので、それを撮っただけなんです。自分の中で「こうなってほしいなあ」と思うと、なんとなくそのようになっちゃうし、自分が思っていた以上の予想外の楽しいことが起こったりするんです。写真を撮っていて楽しいのはそんな偶然の出会い…

小学生だった子どもたちも今や高校生になって、この写真は思春期の子どもたちとしては不本意みたいで(笑)我が家では封印された写真になっていますが、あと5年もすればまた見返してくれるかなあ、と思っています。

三澤武彦さんの作品 カメラ/CANON EOS5D レンズ/アダプターリングを付けてContax Planar 85mm F1.4 設定/絞り優先「A」モード 絞り開放 シャッター速度1/4000 ISO感度800

子どもを撮るときにその子らしさを引き出すために心がけていること、大切にしていることは?

ぼくの場合、その場の雰囲気を一番大切にしています

特別な日なら笑顔あふれる楽しい雰囲気も大事ですが、ふつうの日なら、ふつうの日の雰囲気を大事にしています。これが案外難しいのですが、このごろやっとふつうに撮れるようになってきました。自分の場合は子ども写真というよりも家族の写真を撮ることが多いのですが、ふつうでいるためには、おとうさんおかあさんの協力も大きいです。

「笑って〜」とか「こっち向いて〜」と無理矢理盛り上げるとやはりお互い疲れちゃうし、自分自身がもともとそんなにコミュニケーション能力は高くないし、場を盛り上げる人間ではないのです。何がなんでも笑顔じゃなきゃダメということはないと思うし、笑顔の写真を求められるときもあるけれど、実はふつうの写真を残したいのです。

この写真(写真左)は一緒にお昼ご飯を食べに行った帰り道。家まで帰る道の縁石を急に平均台みたいに歩き始めて、「自分もこうやって父母に手をつながれ縁石の上を歩いた記憶があるなあ」と思い出しがなら撮っていました。この子が大きくなったときに、手を繋いでいる父のことやこの日のこと、あわよくばぼくのことを思い出してくれたら撮影者として最高に幸せです。

もう一枚(写真右)は我が家の家族が集まっている写真です。うたた寝していたら笑い声で目が覚めました。ヨメさんが自分の小学生のときの日記を見つけて、みんなで読んで笑っていたのを撮りました。日常の何気ない一枚ですが、その場の和やかな雰囲気が伝わってくると思います。

三澤武彦さんの作品 カメラ/SONY α99 レンズ/SONY 50mm F1.4 設定/絞り優先「A」モード 絞りF2.0 シャッター速度1/4000 ISO感度800
三澤武彦さんの作品 カメラ/SONY α900 レンズ/SONY 50mm F1.4 設定/絞り優先「A」モード 絞りF1.4 シャッター速度1/125 ISO感度1000

プロカメラマンの目線で、子ども写真を撮るときはどこにポイントを置くといいでしょうか?
アーティスティックな写真を撮るテクなども…。

三澤武彦さんの作品 カメラ/SONY α99 レンズ/SONY 28mm-70mm F2.8 設定/絞り優先「A」モード 絞りF4 シャッター速度1/125 ISO感度800

撮る前に「こんな写真が撮れたらいいなあ」とある程度イメージしているのですが、最初にも述べましたが、そのままでは頭の中で作る写真なので、きれいに撮ることはできるけれど、あるレベル以上の魅力的な絵にならないことが多いのです。自分が魅力的だと感じる写真はワクワクする予想外のことが起こったり、なにかしらプラスαがあるときが多くて、そのときは自分もすごく集中している状態です。
たとえば、立っている写真を撮ろうとしていたけど、子どもがジャンプしちゃったり、座っちゃたりしても、それはNGではなくてときにはチャンスになるんです。そういうチャンスにいつでも対応できるように頭の中を柔軟にしておいたほうがよいですね。そのうち、どんなことが起こるか予想ができたり、引き寄せたりできます。

この写真は七五三だったのですが、大雨で、参門で雨宿りしていました。そしたら神社のニワトリがやってきて雨宿りしていて(笑)、一緒に撮ることができました。雨でどうなるかなと思ったけど、ご機嫌になってニワトリさんのマネをしてくれました。
技術的なことでは、写真を撮るうえで、光がとても大事だと思っています。あまり光を意識した写真がないように思うかもしれませんが、被写体の魅力を生かすのにやっぱり光は大切です。
晴れた屋外なら太陽の向きをとても気にします。逆光半逆光で撮ることが多く、あまりに日差しが強いときは、建物の軒下や木陰に入って地面の照り返しを利用したりします。曇りや雨だと光が一様にあたるので、向きを気にすることはなくなるのですが、光に方向性がなくメリハリがなくなってしまいます。そんなとき、建物の軒下に入ると光の方向性が出てきます。この写真も雨の日でしたが、ちょうど楼門の下だったので、やわらかい中にも立体感が出る光をとらえることができました。

仕事でもたくさんの子ども写真、家族での写真を撮られていますが、初めて会ったお子さんでもいい表情&いい写真が
撮れるコツは?

とにかく最初は、遊ぶことから始めています
そうしないと子どもに信用してもらえないので。それも遊んであげるんじゃなくて、本気になって一緒に遊びます。頭ではわかっていても、大人の頭だと切り替えるのがなかなか難しいのです。言葉がわかりかけるような年齢の子は、いろいろなおもちゃやお菓子&ネタでなんとかなりますが、0歳児の子はほんと自分の純真さを試されているみたい(笑)。
自分が本気で楽しんでないと見抜かれちゃう。赤ちゃんはたぶんこっちのオーラだけ感じているんでしょうね。
そうやって子どもに信用してもらいながら、子どもよりも自分が楽しんで遊んでいるときがあって、撮影そのものが遊びになっていって…。そういうときは写真も良い感じになっています。
自分は仕事で写真を撮っているのですが、実は逆に癒してもらっていることのほうが多いんです。ホント感謝です。

三澤武彦さんの作品 カメラ/SONY α99 レンズ/SONY Planar 85mm F1.4 設定/絞り優先「A」モード 絞り開放 シャッター速度1/500 ISO感度800

おすすめのカメラとレンズ、プラスであるといいカメラグッズ

おすすめレンズ/SONY Planar 85mm F1.4

レンズはプラナー85/1.4が大好きです。開放で使うことも多いです。開放のボケ具合と周辺光量のおち方が好きなんです。85ミリの中望遠レンズが好きで、いろいろなメーカーのレンズを使ってきましたが、とくにソニーのプラナー85/1.4が一番優秀です。
どう優秀かというと、開放で撮ることも多いのですが、ピントのボケ方がとてもゆるやかなので、多少前ピン後ピンでもピントが合って見えちゃう。開放のシビアなピント合わせから解放されてちょっとうれしいのです。

この写真は,そのレンズで撮りました。
結婚式からいつも定期的に撮っているご家族の、思春期の娘とお父さんのツーショット。カメラを見るときは笑顔なんだけど、「手をつなごう」とお父さんが言ったらきっと睨んでいました(笑)。この表情がいいですよね。

この子から「おじちゃん、私が結婚するまで生きていてね」と言われて、おいおいと思ったけどうれしかったなあ。生まれたときから撮っているから。

おすすめグッズ/白い布

撮影のときには畳三畳ほどのインド綿の白い布を持っていきます。これがいろいろ使えるのです。最初はレフの代わりに使っていました。地面に敷いたり、三脚にかけたりして。そのうちピクニックシート代わりもなったり。無地のピクニックシートって案外なくて、白だから草の上にも映えるし、そこに座れば自然とレフ効果も生まれます。収納も簡単なのでつねに持っていきます。

おすすめグッズ/ストロボのデュフューザー

日中シンクロをさせて、瞳にアイキャッチを入れることもよくあります。発光面が大きいほうが、きれいにアイキャッチが入るのですが、折りたたみ式などいろいろなものを試した結果、中国製無名メーカーのこのデュフューザーを見つけてきました。1000円ぐらいでした。ベロクロで止めるタイプだったのですが、自分のストロボに合うようにカッターナイフで削ってはめ込むようにしました。子どもたちがどん兵衛のカップみたいと笑います。
あと、子どもを撮るときにアンパンマンは無敵です。おばあちゃんも知っているし。マペットの胴体を無理矢理頭の中に押し込んで、ボール状にして使っています。ひとりでやっていると、マペット操作できないので。これを頭の上に最多3個乗せて写真を撮るわけです。人って目があるとそこを見てくれるので(笑)。

三澤武彦さんが選ぶ思い出深いベストショット

『子の心 親知らず』
結婚式を撮ったご家族の赤ちゃんの写真。パパママは笑顔を撮ってもらおうと、思いっきり盛り上がっているのですが、当の本人はとても迷惑そうで(笑)。
それでも今では、当人&撮影者を含めてお気に入りの写真です。
このとき自分は、「あ、笑顔の写真が良いわけじゃなくて、このときの気持ち、思い出そのものがすばらしいのだ」と思いました。

『地べたの赤ちゃん』
お宮参りのときの写真。お母さんが「この子は何かポッ〜と生まれてきた気がするの」。そう言って地べたに置いて写真を撮りたいと希望しました。
そしたらおばあちゃんが反対して(笑)。
おばあちゃんがトイレに行っている隙にこっそり撮影しました。撮影のアイデアってお客さんからもらうことが多くて、それが自分でも目からウロコだったのです。

プロカメラマン三澤武彦さん
三澤武彦さん
ブログ:「三澤家は今・・・」 Misawa Now blog版
1962年岩手県釜石生まれ、名古屋育ち。もともとは結婚式の写真を中心に撮影の仕事をしてきたが、その後の家族の定点観測をするように。
結婚式の写真の業界では、多くの人にヒントを与えてきた存在。現在は家族写真を中心に撮影。ブログをするようになって発信することのおもしろさを実感。
「ヨメさんと息子3人の5人家族。でも灯台下暗しで自分の家族の写真は少ないのが残念(笑)」
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